今月に入って米国がウクライナ戦争の停戦仲介役を降りるという発言があり、それを受けてロシアのプーチン大統領がやや妥協した停戦案を提示するなどここにきて停戦交渉に変化が出てきました。
しかしこの新停戦案もクリミア半島を明け渡しNATO加盟も断念するという内容で、ウクライナが到底承諾できるものではなく、個人的には早期の停戦は実現しないと考えています。
今回はこのままウクライナが戦争を継続する価値について考えていきます。
中露関係の悪化
中国はロシアに残された数少ない大国の貿易相手ですが、3月頃から西側の対露制裁のリスクを考慮しロシア産原油の購入を取りやめたり縮小する傾向にあり今後もロシアの収入源が減少する可能性があります。
またロシア経済は戦時経済の特徴で短期的には全体の購買力が上昇していますが持続的ではなく、インフレと高金利の影響で消費活動が減退すると中国から見ても輸出する旨味はなくなっていきます。
中国は旧ソ連の崩壊を研究していて意外とリスク管理や利益の計算は正確なので、中国の方針次第でロシアが深刻な物資不足に追い込まれる可能性もあります。
ロシア軍兵士の変化
ウクライナに侵攻しているロシア軍の数は50万人〜60万人程度と推定されていて、損失数を兵士の採用数に見合った数に調整しているためこの数自体に変化は出ないと考えられます。
問題なのはロシアは頭数を揃える事に注力しているため、兵士になれば一定額の借金を免除するとアピールしたり学業不良の大学生や囚人を動員する動きが出ている点です。
この傾向が続けば自分の意思で志願した人の数が減る事で全体の質は低下すると考えられ、戦果は縮小し軍の規律が乱れ反命や脱走の可能性も高まりロシア側の作戦計画に大きな支障がでそうです。
またこれまでの様にロシア郊外や農村部で兵士になり得る人材が枯渇してくれば、発言権のあるモスクワなどの都市部からも動員せざるを得なくなり国民の反戦感情が高まる可能性もあります。
トランプ氏の変化
トランプ氏はウクライナ戦争を早期に終わらせ前大統領との違いを見せると就任前に宣言していましたが、今の所はウクライナの足を引っ張り停戦交渉の仲介も辞めようとしています。
ただ、トランプ氏も本心では成果をあげなければ自身の支持率が更に低下するとわかっているので、米国の影響力を下げる事に繋がるウクライナ支援の停止を決断するのは難しく、場合によってはバイデン大統領時代レベルの支援を行う可能性もあります。
最悪のケースで米国が支援を打ち切ったとしても、欧州各国が支援を強化しロシア側も息切れしかかっている現状を見れば米国に新しい大統領が誕生するまで凌ぎきれると個人的には信じています。
まとめ
ウクライナはNATO加盟も代わりの安全保証もない状態で停戦を行っても、将来的な侵攻を避けられないので譲歩する選択は考えられません。
今は反攻に出る余力はないので防戦に努めるしかありませんが、敵に出血を強いて攻撃計画を遅らせる事ができれば勝機が訪れる可能性は残るのでウクライナ将兵の敢闘に期待したいですね。