ウクライナでの戦争では季節ごとに特徴があり、夏季では気温が高く地面が乾いているため戦車や装甲戦闘車両がスムーズに動けますが、春と秋にある泥濘期では作戦に支障がでるケースも増えてきます。
現在は夏季の終わりで今後泥濘期から厳寒期に移っていき、戦場の主力は歩兵や小型ドローンからミサイルなどの長距離兵器が主力になっていきます。
そんな中、西側諸国ではウクライナが西側の長距離ミサイルを使ってロシア領内へ攻撃を行えるかどうかについて各国で意見が別れていて、戦争の分岐点になりそうな局面を迎えています。
今回は長距離攻撃の有効性とそれにより生じる危険について考えていきます。
ロシア領内への長距離攻撃の意味
平地での戦場では20世紀の戦場と同じ様に塹壕戦による消耗戦が展開され、ドローンや航空兵力を用いた支援により状況を有利に進めようとします。
ウクライナの立場から見るとロシア軍の航空機から投射される滑空誘導爆弾や燃料気化爆弾が非常に厄介で、攻撃が始まると陣地に釘付けにされるだけでなく場合によっては掩蔽壕の中にいても助からないケースもありました。
ロシア領内に長距離攻撃ができれば、まず敵航空基地を叩けるため前線で戦う兵士の不安を1つ取り除く事ができ、物資集積拠点や軍需工場を攻撃すれば戦争継続力を低減させる事も可能になります。
また攻撃をされていない航空基地でもミサイルの射程範囲であればいつでも攻撃されるリスクがあるため、航空機を大きく東に下げるなど対応を強いる事もできそうです。
長距離攻撃によるリスク
メリットが多くあるのに西側諸国が踏み切れない1番の要因は戦争の激化を招く心配があるからで、ロシアの軍事産業が生産力を引き上げたり戦術核の使用に踏切られると更に状況が悪化する危険があります。
特に都市部のモスクワやサンクトペテルブルクの住民感情が変化し戦争に協力的になると、都市部からも多くの動員を行える様になる可能性もあります。
また最悪の場合ロシアがNATOと直接戦争を行う可能性もあるので、ロシアに近い国にとっては自国に危険が及ぶ選択となるので思い切る事は難しいかもしれません。
まとめ
ロシアへのミサイル攻撃はウクライナにとって有利に働く事が多いものの、戦争の激化を招く可能性もあり西側全体の支持を得られていません。
今後最大の支援国である米国の大統領選が終わって思い切った行動が取りやすくなると状況が変化する可能性があるので、特に11月以降の動きに注目していきたいですね。