ロシアがウクライナに侵攻以降ウクライナ軍は殆どの局面で防戦を強いられてきましたが、8月上旬からロシア本土へ越境攻撃を仕掛け戦局を覆す可能性が出てきました。
今回はウクライナの越境攻撃により政治・経済面でどのようなメリットがあるか考えていきます。
越境攻撃について
今年の8月6日頃からウクライナと国境を接するロシア南部のクルスク州で武装集団が集落を次々と占拠しているニュースがロシア側で広がり、数日経ってウクライナ側から正規軍による攻撃であると発表がありました。
これまでウクライナはロシアの核使用を誘発する危険があったためロシア本土への攻撃は厳禁とされてきましたが、段階的にクリミアやロシア本土にドローン攻撃を仕掛けて相手の出方を伺い、ロシア軍の考えを読んだ上で大胆な地上攻撃に移行する事ができました。
攻撃開始から10日が経過した時点ではロシア側の抵抗は弱く、ウクライナは多数の捕虜と兵器を鹵獲し、様々な方向に進行するための足がかりを作っています。
価値の高い捕虜の獲得
これまでウクライナ軍が東部戦線で戦ってきたロシア兵は旧ソ連諸国やアジア諸国等で集めてきた突撃兵が主体でしたが、国境を守るのは主にロシア人の若い徴収兵で捕虜にされると世論の戦争支持に関わるため交渉により取り戻す必要が生まれます。
特にモククワやサンクトペテルブルクなど都市部出身の兵士が捕まった場合、家族や親戚の発言権は強いため早い段階でウクライナ人の捕虜と交換できる可能性が高まりそうです。
こうして捕虜を取り戻せれば軍事力や経済力の強化に繋がりますし、大人数を獲得できれば停戦時に領土の一部と交換できる期待もできます。
戦争を長期化できる
ロシアは西側の制裁を受けているので戦争が長引けば経済のあらゆる場所に支障が出るので、できるだけ短い期間での目標達成を狙っていると考えられます。
ウクライナ側から見れば東部戦線だけで戦うと押し返すチャンスがあっても塹壕と地雷原に手間取る懸念がありますが、越境攻撃で撹乱する事でロシア軍の戦力を分散させる事に繋がり結果的に東部の友軍の助ける効果も期待できます。
そしてこの戦争が5年、10年続けば帝政ロシアの様に革命に繋がったり、戦時経済に傾きすぎた末期のソ連のような状況になる事も考えられます。
兵力の拡大が図れる
ロシア国内にはパルチザン組織が複数存在し平時は市民に紛れつつもウクライナに情報を流したり、小規模の破壊工作をすることでウクライナをサポートしてきました。
更に現在の様にウクライナ軍の支配地域が増えれば活動がしやすくなり、大規模なプロパガンダを流してウクライナに有利な世論を形成したり一部は軍に加わる事もあるかもしれません。
特にクルスクやベルゴロドのロシア人はウクライナ出身者も相当数いると考えられ状況次第では寝返る可能性もあるので、例え少数でもウクライナ軍に加わればそれが呼び水となり他の地域でもウクライナに協力する方が増えるかもしれませんね。
まとめ
ウクライナの越境攻撃は殆ど賭けに近い作戦でしたが、攻撃開始10日の時点では大きな戦果を挙げ戦争全体の流れさえも変えようとしています。
今後ロシア側の反撃が本格化すれば撤退させられる可能性もありますが、ロシア国内で大きな政情不安を生み出す事ができれば結果的に良い勝負手だったと言えるので今後も越境攻撃の動きに注目したいですね。