日本は世界一の長寿国として知られていて、日々新しい治療法の発見や医療器具の改良によりこれまで治らなかった病気が治るようになっているため未来ではより平均寿命が伸びる事が期待できます。
ただ医療技術が発達した事で患者の体が殆ど機能していなくても延命できるようになり、しかも手厚い高齢者医療制度により大多数の方が延命治療を利用できるようになりました。
今回は倫理的なジレンマにより意見の別れる高齢者の延命治療について考えていきます。
長引く延命治療
手を尽くし患者の助かる見込みがなくなると家族の同意を得て延命治療を切り上げ、患者がより苦しみのない方法で最期を迎える方向に進んでいきます。
問題は患者の状態によっては助かる見込みがなくなる状態にまでに長い年月がかかる場合がある点で、体に新たな問題が発生しても助かる選択肢がある限り医療関係者は最善の努力を続けます。
そして家族の要望によっては胃瘻により食事ができない状態でも栄養を送ったり意識がなく植物状態で生かされ続けるケースもあり、人の尊厳を損なう場合もあります。
延命治療打ち切りの判断
先進国の中でも延命治療に関する考え方は様々あり、傾向的に欧州では終末期に通常の食事ができなくなった患者に対し胃瘻や点滴による栄養補助を行わないケースが多いとされています。
患者の寿命を伸ばす方法を有していながら治療に向かわないのはある意味で命を奪うと考える方がいるかもしれませんが、個人的には老化により通常の食事が2度とできなくなった状態は老衰であり寿命であると言考えています。
また認知機能が極端に衰えていて自身の死に関して正常な判断ができない状況にあると家族の判断が重視されてしまうので、終末医療についてはもっと前の段階で話し合う事で人生の最期まで悩みを抱えずに済みそうです。
社会保障費の問題
少子高齢化が進む日本では高齢者世代の方1人に対し現役世代は2.1人しかおらず、近い将来には高齢者1人をほぼ現役世代1人で支えるというかなり無理がある体制となり現在の社会保障制度が崩壊する可能性があります。
これを解決するために高齢者の医療費の自己負担を現役世代に近づけたり、スイスのように安楽死制度を導入するなど選択肢はありますが、日本では高齢者は政治家にとって重要な票田なのでこういった議論はあまり進まない傾向にあります。
しかし終末医療の考え方もそうですが議論を先延ばしにすると事態は悪化していく一方なので、できるだけ早く対策を打ち出して欲しいですね。
まとめ
日本では過剰な延命治療により患者自体が苦しむケースが多くあるように感じられ、終末医療に関する指針も定まっていないため屍のようになりながら生きている患者が大勢存在します。
国が方針を決めても結局は家族の意思により延命治療が行われるかもしれませんが、人生は体が動くうちに楽しみ最期に近づくにつれ後悔のない終わり方についてよく考えたいですね。